この世界の片隅に
戦争もののつらさを覚悟して観ると、少し違います。日常が丁寧に積まれているぶん、失われるものの重さが出る作りです。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督・脚本
- 片渕須直
- 原作
- こうの史代
- 音楽
- コトリンゴ
- 声の出演
- のん、細谷佳正、稲葉菜月
- 上映時間
- 129分
- 公開
- 2016年11月
あらすじ(ネタバレなし)
昭和19年、広島。絵を描くのが好きで、少しぼんやりした娘のすずは、顔も知らない相手のもとへ嫁ぐことになります。嫁ぎ先は軍港の町・呉でした。
慣れない家事に苦戦しながら、配給の減っていく食材で工夫を重ね、防空壕を掘り、すずは日々を送ります。空襲は激しくなり、やがて彼女は大切なものを失います。そして昭和20年8月がやってきます。
ここが見どころ
食事の工夫
楠公飯の炊き方、雑草の料理、配給の分け方。戦争の話をせずに、戦争を描くという方針が、生活の細部に徹底されています。
考証の徹底
呉の町並み、艦船の配置、空襲の日付。膨大な調査に基づいて再現されており、絵の一つひとつに根拠があります。
すずの絵
彼女が絵を描くという設定が、映像表現の変化として使われます。ある出来事の後、画面そのものの見え方が変わる場面が強い。
この映画について:戦争を描かず、戦争中の生活だけを描く。
戦争映画にありがちな、悲惨さの強調がありません。すずは最後まで、その日の食事と洗濯のことを考えています。だからこそ、日常が削られていく過程が痛い。
のんによる声の演技が非常に良く、間の抜けた明るさが作品の温度を決めています。この明るさがなければ、ただつらいだけの作品になっていたはずです。
終盤、すずが初めて感情を爆発させる場面があります。そこまで我慢していたぶん、破壊力が大きい。難点は、時間が飛ぶ箇所が多く、初見では出来事の順序を追いにくいことでしょうか。
この作品の良さ
- 生活の細部だけで戦争を描く方針
- 徹底した時代考証
- のんの声の演技が作品の温度を決めている
当サイトの評価
戦争を描かず、戦争中の生活だけを描く。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.8 |
| 映像美 | 4.8 |
| 音楽 | 4.6 |
| 演技 | 4.7 |
| 余韻 | 5.0 |
世間ではどう評価されているか
- キネマ旬報
- 1位 2016年 日本映画ベスト・テン
- 公開規模
- 小 口コミで長期上映に
- IMDb
- 7.8 /10
クラウドファンディングで製作費の一部を集め、当初は小規模公開でしたが、口コミによって上映が拡大し長期のロングランとなりました。キネマ旬報ベスト・テンで日本映画1位に選ばれています。
膨大な資料調査に基づく考証が高く評価されており、後に未公開場面を加えた長尺版も公開されています。
こんな人におすすめ
- 戦争を扱った作品を、日常の側から観たい人
- 考証の細かい作品が好きな人
- 『火垂るの墓』とは違う描き方を知りたい人
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