東京物語TOKYO STORY
邦画1953年ドラマ1950年代小津安二郎

東京物語

海外の批評家投票で日本映画の最上位に置かれ続けている作品です。地味に見えて、なぜここまで評価されるのかを書きます。

ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。

作品データ

監督
小津安二郎
脚本
野田高梧、小津安二郎
出演
笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子
上映時間
136分
公開
1953年11月

あらすじ(ネタバレなし)

尾道に暮らす老夫婦が、東京で暮らす子どもたちに会うため上京します。しかし町医者として開業している長男も、美容院を営む長女も、仕事に追われて両親をかまう余裕がありません。

二人を丁寧にもてなしたのは、戦死した次男の妻・紀子だけでした。子どもたちに気を遣わせまいとする老夫婦は、予定を早めて尾道へ帰ります。そして帰宅後、母が倒れます。

ここが見どころ

カメラが動かない

低い位置に据えられたカメラは、ほとんど動きません。人物は正面を向いて話し、感情が高ぶっても寄りません。観客が身を乗り出すしかないという距離の取り方です。

「いい人」が誰もいない

子どもたちは冷たいですが、悪人ではありません。ただ生活に追われている。誰も責められないまま、それでも取り返しがつかないという描き方が徹底されています。

原節子の笑顔

終盤、紀子が自分について語る短い場面。それまでずっと穏やかだった人物の内側が一度だけ見え、この映画の重心がそこに移ります。

この映画について:何も起きない。それでも、これ以上ないほど残る。

事件は起きません。旅行して、帰って、人が亡くなる。それだけです。それでも観終わったあとに重いものが残るのは、親子というものの距離が、誰のせいでもなく開いていくことを、言い訳なしで見せているからだと思います。

演出の禁欲ぶりは徹底していて、感動的な音楽も、泣きの寄りもありません。だからこそ、たまに置かれる風景のカットが効いてきます。

テンポは非常にゆっくりで、台詞の言い回しも古い。いま観るには忍耐が要る作品であることは間違いありません。ただ、一度合うと、後から何度も思い出す種類の映画です。

この作品の良さ

  • 誰も悪者にしないまま、取り返しのつかなさを描く脚本
  • 動かないカメラによる、独特の距離感
  • 笠智衆・原節子をはじめとする芝居の抑制

当サイトの評価

4.9/5.0

何も起きない。それでも、これ以上ないほど残る。

項目別の採点(5点満点)
項目点数
脚本5.0
映像美4.7
音楽4.2
演技5.0
余韻5.0

世間ではどう評価されているか

批評家投票
上位常連 英BFI「Sight & Sound」誌ほか
IMDb
8.1 /10
影響
国際的 多くの監督が代表作に挙げる

英国映画協会の『Sight & Sound』誌が10年ごとに行う映画人投票では、日本映画としてもっとも上位に置かれ続けている作品です。監督投票で1位になったこともあります。

ヴィム・ヴェンダース、ホウ・シャオシェン、是枝裕和など、国内外の多くの監督が影響を公言していることでも知られます。

こんな人におすすめ

  • 静かな映画をじっくり観られる人
  • 家族についての話に興味がある人
  • 日本映画の古典を一本押さえたい人

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