EVERYWHEREALL AT ONCE
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
コインランドリーを営む移民女性が、並行世界の自分の能力を借りて戦う。悪ふざけの密度と、母娘の話の真面目さが同居する。
クラシック音楽の知識がなくても観られますが、あると面白さが増します。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
リディア・ターは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者です。女性として初めてその地位に就き、作曲家としても評価されています。
マーラーの交響曲第5番の録音を控え、彼女は多忙な日々を送っています。自伝の出版、指揮者育成基金の運営、そして楽団内の人事。
そのなかで、かつて彼女の基金に関わっていた若い指揮者の訃報が届きます。過去の出来事が、少しずつ現在に染み出してきます。
10分以上続く対談の場面。専門用語だらけの会話で、この人物の知性と傲慢さを同時に示します。
学生と作曲家の評価をめぐって長回しで衝突する場面。この映画で最も議論を呼んだ一連です。
冷蔵庫の音、メトロノーム、隣室の悲鳴。主人公にだけ聞こえる音が、精神状態の指標になっています。
この映画は、主人公を告発も擁護もしません。権力を持った人間が、その権力をどう使ったかを、観客に判断させます。
ケイト・ブランシェットは指揮、ピアノ、ドイツ語を習得して臨んでいます。演技の水準は極めて高い。
難点は158分の長さと、終盤の展開が急なこと。また、クラシック業界の内輪の話が多く、入りにくさはあります。
頂点に立つ指揮者が、少しずつ崩れていく。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.4 |
| 映像美 | 4.4 |
| 音楽 | 4.8 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.5 |
2022年のヴェネツィア国際映画祭でケイト・ブランシェットが女優賞を受賞しました。
主人公のリディア・ターは架空の人物ですが、実在するかのような記述が公開時に一部で広まりました。
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