天国と地獄
黒澤明監督の現代劇でいちばん面白い一本だと思っています。143分、緩む場面がありません。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- 黒澤明
- 原作
- エド・マクベイン
- 出演
- 三船敏郎、仲代達矢、香川京子、山崎努
- 上映時間
- 143分
- 公開
- 1963年3月
あらすじ(ネタバレなし)
製靴会社の重役・権藤は、会社の経営権を握るため全財産を賭けた買収を進めていました。その夜、息子が誘拐されたという電話が入ります。
しかし誘拐されたのは、間違えられた運転手の息子でした。他人の子のために全財産を捨てるかどうか。権藤の決断のあと、物語は警察の捜査へと移り、犯人を追う長い追跡が始まります。
ここが見どころ
前半の密室劇
約1時間、舞台は権藤家の応接間だけ。人物の立ち位置と視線だけで、金と倫理をめぐる緊張を作ります。
特急列車の受け渡し
走行中の列車の窓から身代金を投げる数分。実際の特急を使って撮られており、緊張が本物です。
一点だけの色
白黒作品ですが、ある場面で煙だけがカラーになります。捜査の転換点を、色ひとつで示すという大胆な演出です。
この映画について:前半は屋敷の一室だけ。後半は街を全部使う。
構成が二部構成として明確に割れています。前半は倫理の話、後半は組織的捜査の話。まったく質の違う面白さが一本に入っています。
後半の捜査は、聞き込み、尾行、鑑識と、地道な作業の積み重ねです。刑事たちを英雄的に描かず、人海戦術の泥臭さを見せる。
難点は143分という長さと、終盤の犯人像の描き方がやや図式的なことです。タイトルの「天国と地獄」という対比も、いまの目ではやや直接的に映ります。
この作品の良さ
- 前半の密室劇と後半の捜査劇という二部構成
- 地道な捜査の積み重ねを見せる姿勢
- 色を一点だけ使う演出
当サイトの評価
前半は屋敷の一室だけ。後半は街を全部使う。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 5.0 |
| 映像美 | 4.9 |
| 音楽 | 4.5 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.8 |
世間ではどう評価されているか
- IMDb
- 8.4 /10
- 原作
- エド・マクベイン 『キングの身代金』
- 評価
- 定番 黒澤の現代劇の代表作
アメリカの警察小説を原作としながら、舞台を横浜に置き換えています。その後の日本の刑事ドラマに与えた影響は非常に大きく、捜査を組織の作業として描く型はここから広がりました。
こんな人におすすめ
- サスペンスが好きな人
- 黒澤明の時代劇以外を観たい人
- 捜査ものが好きな人
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