ゼロ・ダーク・サーティ
実際の作戦を扱った映画として、賛否の激しかった作品です。その議論込みで観る価値があると思っています。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- キャスリン・ビグロー
- 脚本
- マーク・ボール
- 出演
- ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジェニファー・イーリー、カイル・チャンドラー
- 製作国
- アメリカ
- 公開
- 2012年
- 受賞
- 米アカデミー賞 音響編集賞
あらすじ(ネタバレなし)
2003年、CIAの分析官マヤは、中東の拠点へ着任します。同時多発テロの首謀者を追う任務に、彼女は新人として加わりました。
尋問、監視、情報の突き合わせ。手がかりは断片的で、確度は低く、上層部の関心も年月とともに移ろいます。仲間が命を落とし、テロは各地で続きます。
それでもマヤは、一人の連絡役の存在にこだわり続けます。周囲が別の説を採る中、彼女だけが同じ線を追い続けた。やがてその執念が、ある屋敷の所在へたどり着きます。
ここが見どころ
感情を排した描写
音楽で盛り上げず、人物の背景もほとんど語られません。マヤに家族も私生活も与えないという選択が徹底されていて、彼女は任務そのものとして存在します。
終盤の急襲
暗視装置の緑の視界で進む30分弱。英雄的な高揚はなく、手順が淡々と実行される。アクションとしてではなく、作業として撮られています。
最後のカット
任務が完了した後、彼女の表情に何が浮かぶか。台詞はありません。10年間を捧げたものが終わったあとに何が残るかだけを見せて、映画は終わります。
この映画について:10年かけて一人の男を追った、CIA分析官の記録。
この作品の最大の論点は、尋問場面の扱いです。拷問に近い手法が情報獲得に寄与したように見える構成になっており、公開時に強い批判を受けました。作り手は肯定も否定もしないと述べていますが、描写の順序が結果的に効果を示唆しているのは事実だと思います。
そのうえで、映画としての作りは非常に硬質です。10年という時間を、盛り上がりを作らずに繋いでいく。成果が出るまでの大半は徒労であるという描き方に、キャスリン・ビグローの視線が出ています。
ジェシカ・チャステインの演技は、感情の起伏をほとんど見せません。それが終盤の一瞬で効いてきます。この配分が見事です。
娯楽作ではありません。すっきりしたい人には向かないし、政治的な立場によって受け取り方が大きく変わる作品です。ただ、その議論を含めて記録的な価値のある一本だと思います。
この作品の良さ
- 感情を排し、作業として描く硬質な構成
- 10年を盛り上がりなしで繋ぐ時間の扱い
- ジェシカ・チャステインの抑えた演技
- 最後のカットに全部を託す終わり方
当サイトの評価
10年かけて一人の男を追った、CIA分析官の記録。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.3 |
| 映像美 | 4.2 |
| 音楽 | 3.9 |
| 演技 | 4.5 |
| 余韻 | 4.3 |
世間ではどう評価されているか
- 米アカデミー賞
- 受賞 音響編集賞
- ノミネート
- 5 部門(作品賞・主演女優賞ほか)
- 監督
- キャスリン・ビグロー 『ハート・ロッカー』
第85回アカデミー賞で音響編集賞を受賞し、作品賞・主演女優賞を含む5部門にノミネートされました。
劇中の尋問描写については公開当時から強い議論があり、アメリカ議会でも取り上げられました。作品の評価と、その論点は切り離せない関係にあります。
こんな人におすすめ
- 『ハート・ロッカー』が良かった人
- 感情に訴えない硬質な作品が好きな人
- 議論のある題材でも自分で判断したい人
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