桐島、部活やめるってよ
公開時は小規模上映からのじわじわ拡大という形でしたが、口コミで評価が広がり、その年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲りました。青春映画の枠に収まらない一本です。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- 吉田大八
- 原作
- 朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
- 出演
- 神木隆之介、橋本愛、東出昌大、大後寿々花、松岡茉優
- 上映時間
- 103分
- 公開
- 2012年8月11日
- 受賞
- 第36回日本アカデミー賞 最優秀作品賞
あらすじ(ネタバレなし)
ある地方の高校。バレー部のキャプテンで、成績もよく、彼女もいて、誰からも一目置かれていた桐島が、突然部活をやめたという噂が流れます。理由は誰も知らず、本人とも連絡がつきません。
桐島がいなくなっただけで、周囲の人間関係が少しずつずれ始めます。副キャプテンは試合に出るかどうかで揺れ、桐島の友人たちは居場所を失い、彼女は苛立ちを隠せない。
一方、教室の隅で8ミリカメラを回している映画部の前田は、そんな騒ぎとほとんど無関係に、ゾンビ映画の撮影を続けています。物語は同じ数日間を、複数の生徒の視点から繰り返し描いていきます。
ここが見どころ
同じ時間を何度も繰り返す構成
金曜日の放課後という同じ時間を、視点を変えて何度もなぞります。ある生徒にとっては何でもない瞬間が、別の生徒にとっては決定的だったことが積み重なっていく。この構成が主題そのものです。
教室の階層が可視化される
誰がどこで昼食を食べるか、誰が誰に話しかけられるか。台詞ではなく座る位置と視線だけで、学校内の力関係が全部見えてきます。学校を舞台にした映画の中でも精度が異常に高い。
屋上のクライマックス
終盤、映画部の撮影に全員が巻き込まれていく数分間。それまで一度も交わらなかった層の生徒が同じ場所に立ちます。誰も救われないのに、なぜか爽快という珍しい着地です。
俺たちは、ここで生きていくしかないんだよ。
前田涼也(劇中の台詞より)
この映画について:最後まで出てこない人物が、全員の日常を狂わせる。
設定だけ聞くと地味ですが、構造で見せる映画としての完成度が非常に高い作品です。桐島という空白を中心に置いて、その周りの人間だけを描く。中心が空だからこそ、それぞれが桐島に何を仮託していたかが浮かび上がります。
描かれているのは、高校生の恋愛でも友情でもなく、序列です。上にいる人間ほど自分が上にいることに無自覚で、下にいる人間ほどその構造をよく見ている。ここを美化も断罪もせずに描き切ったのが、この映画がいまも語られる理由だと思います。
映像や音楽は控えめで、派手さはまったくありません。演技も抑制されていて、感情が爆発する場面はほとんどない。それでも終盤で確実に何かが起きるのは、それまでの100分で全員の立ち位置が観客の頭に入っているからです。
難点を挙げるなら、人物が多く、序盤は誰が誰か分かりにくいこと。あと、学校生活に嫌な記憶がある人には、序盤のリアルさがしんどいかもしれません。
この作品の良さ
- 同じ時間を視点を変えて描く構成の巧みさ
- 台詞に頼らず、座る位置と視線で階層を見せる演出
- 誰も美化せず、誰も断罪しない距離感
- 終盤の数分に、すべてが集約されていく設計
当サイトの評価
最後まで出てこない人物が、全員の日常を狂わせる。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.8 |
| 映像美 | 4.2 |
| 音楽 | 4.0 |
| 演技 | 4.5 |
| 余韻 | 4.6 |
世間ではどう評価されているか
- 日本アカデミー賞
- 3冠 最優秀作品賞ほか
- 公開規模
- 小 口コミで拡大したタイプ
- 原作
- 朝井リョウ 小説すばる新人賞
第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を含む3部門を受賞しました。大作でも話題作でもない小規模公開の作品が作品賞を獲るのは異例で、当時かなり驚かれた結果です。
興行的な規模は大きくありませんが、2010年代の日本映画を語るときに必ず名前が挙がる一本になりました。学校を舞台にした群像劇の基準として、いまも参照され続けています。
こんな人におすすめ
- 派手さより構造の面白さを味わいたい人
- 群像劇が好きな人
- 『リンダ リンダ リンダ』『愛がなんだ』が好きだった人
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